現代女性の枠にはまらない生き方を考えさせられるコンビニ人間

コンビニ人間は2016年、第155回芥川賞を受賞した村田紗耶香さんの著作です。

私はこの本を読んで、コンビニの店員がある価値観を持つ人から軽く見られている事を知りました。主人公の古倉恵子が大学時代から十年以上勤め続けたコンビニは、多くのコンビニと同じように日常性を求められます。

常連客にとってのコンビニは暮らしの一部で、自分の居場所を自宅以外に求める人のための受け入れ場所でもあり、港でもあります。何もない所を旅をしているとコンビニの存在が有難く思えるのは、どのお店の店員もお客への対応が一緒だからです。同じ日常を過ごすのでも、他の店の常連客とは比較になりません。普通の店の場合は営業時間が限られていますが、コンビニの場合はどんな時間に行っても文句を言われないし、多少お酒を飲んでいたとしても気が咎める事もありません。

お酒を飲む店ではありませんが、それと同じかそれ以下の待遇をお客から受ける事があります。この作品の著者・村田紗耶香さんは古倉恵子と同じように同じコンビニに十年以上勤めており、作家としてデビューしてからも店長に頼んでシフトを入れてもらっていますが、彼女自身が恵子と似ている所があるように思えるのです。作中では古倉恵子はコンビニが社会とバランスをとれる唯一の職場だと言っていましたが、長い間勤め続けているのはお店を利用している常連客と相通じる所があるからなのではないでしょうか。

常連客の中の老婦人は「いつ行っても変わらない」と言っていましたが、そう思って利用しても良い場所があると安心出来る事は言うまでもありません。恵子は結婚して子供がいる妹やコンビニの同僚、学生時代の友人達との交流によって、自分の身の処し方を探っています。コンビニのアルバイトへの待遇がどんなものなのかはわかりませんが、正社員と比較にならないものである事は見当がつきます。

三十代の女性で彼氏なし、コンビニ勤務。これだけ聞いて、彼女を「負」のイメージで見る人もいる事でしょう。それにも関わらず暗い印象を受けないのは、彼女自身は関係者達に対して冷静な態度を一貫しているからです。

作品の最後で彼女は根っからのコンビニ人間である事を悟りますが、それは枠にはまらない生き方を選ぶことになります。本書は現代の女性の様々な幸福を語る時に、話題になる一冊になる事は間違いありません。